特定非営利活動法人 明日の歯科医療を創る会POS
歯科医療ネットワーク メールマガジン

患者中心の歯科医療T

【患者に選ばれる歯科医療とは】 
〜歯科医療界の現状〜
歯科医療者としてより良い歯科医療を提供し、社会や住民に貢献していきたいという考え方は多くの歯科医療者が共通に持っている思いです。しかしながらそのために日夜研鑽し、より良い医療の提供に努力したとしても、それが必ずしも受け入れられているとはいえないのではないでしょうか。また、ビジネスとしてみた歯科医院経営も年々厳しさを増しています。事実、多くの新規開業により医療機関あたりの患者数は減少しています。
さらに個々の患者における疾患数は減少しており、このような状況が歯科医院経営をより厳しいものにしているようです。あなたは、
日本の歯科医院数はコンビニエンスストアの2〜3倍もあることをご存知ですか?

この様な状況下でも、患者に選ばれ経営的にも安定している歯科医療機関は存在します。つまり流行る歯科医院と流行らない歯科医院が生まれているということです。ビジネスとしての歯科医院経営を考えた場合、それは一般のビジネスと同様に二極化が進むことは避けられない結果が出ているということでしょう。その二極化がどのような要件により発生するのでしょうか、またどのような歯科医院が二極分化における勝ち組になるのでしょうか。このためには患者に選ばれる歯科医院として医療サービスを提供する必用があるのです。ではどのような歯科医療サービスが選ばれるのかについて考えてみたいと思います。
〜パターナリズムの概念〜
選らばれる歯科医療サービスとはどのような要件を持たなければならないのでしょう。
医療界は医療サービスを提供するその倫理基盤をパターナリズム(fig.2)に置いてきました。これはヒポクラテスの言葉(fig.3)に端を欲したと言われる、全ての医療者が学んできた概念です。

『素人の患者に医療上の判断をさせる事は良くない事であり、医療の専門家である医師は患者にとって利益となることを第一に考え、善意を持ってその結果にたどり着くように誘導していく事が大切である。』という概念です。
しかし、この倫理基盤で医療サービスを提供した場合、患者にとっての利益を医療者の価値観において図り、その価値観に基づく結果を患者に対して押し付けるという状況が発生してしまいます。
パターナリズム(PATERNALISM)(fig.2)
  □家父長的温情主義
  □親権主義
  □保護主義
         
〜ヒポクラテスの言葉〜 (fig.3)
  ■医師は患者の身分を問わず、患者の利益を第一に考え業を行い、患者に危害を加えたり不当な行為を行わない。
  ■患者に対して病状を知らせることは患者に余計な心配をかけるだけであり、また素人である患者に医療上の判断をさせてはならない。 
《具体的事例》
咽頭癌患者事例
  ●咽頭癌切除手術の施術により3年間の生存率60%以上
  ●咽頭癌切除手術の施術しない場合には3年間の生存率40%以下
このような場合どちらの方法が良いかを医療者の判断で医療方針を決定する事が適切なのでしょうか?
医療者は患者の命が永らえる事こそが重要という価値観を持っていたとしたなら、患者の利益を第一に考える医療者として、患者へは咽頭切除術と言う治療方針を説明し、その治療に対する同意を得るという展開になるでしょう。これがパターナリズムの考え方です。
しかし患者にとっては、たとえ寿命が延びたとしても声を失って生きる事が延命よりも辛いという価値観を持ってるならば、生存率の低くなる治療方法を選択するかもしれないという事です。


明日の歯科医療を創る会POS
歯科医療ネットワーク メールマガジン 2005.01.24