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患者中心の歯科医療U

【患者の権利を守る医療 その2】

    日本における患者の権利擁護とインフォームドコンセント


日本における患者の権利擁護とインフォームドコンセント

日本において患者中心の概念はどのように受け止められるのでしょうか。
さまざまな角度から検証してみましょう。

司法の立場は日本においても最も世界標準に近い立場といえます。
インフォームドコンセントに象徴される患者の権利は、日本国憲法
13条が謳っている「個人の尊厳」や「幸福追求権」に基づく「人格的自律権」にその根拠を求めることが出来ることから、憲法上の基礎に基づく原則といえます

個人的人権に基づく患者の権利
医療に対する参加権
知る権利と学習権
最善の医療を受ける権利
安全な医療を受ける権利
平等な医療を受ける権利
医療における自己決定権

1992年の東京地方裁判所より、「治療行為にあたる医師は、緊急を要し時間的余裕が無いなどの格別の事情が無い限り、患者において当該医療行為を受けるかどうかを判断決定する前提として、患者の現状とその原因、当該医療行為を採用する理由、治療行為の内容、それによる危険性の程度、それを行なった場合の改善の見込み、当該医療行為をしない場合の予後等についてできるだけ具体的に説明すべき義務がある」(判例タイムズ793号、275頁)としてその説明義務違反を主とした判決が出ています。

医療者の立場は医師会の反応から、特にインフォームドコンセントについてはその必要性を理解しながらも、現実的な医療現場での対応が困難であり、医療現場が混乱に陥るという判断から否定的な立場です。
実際、
1995年の第47回世界医師会総会でのリスボン宣言の改訂採決を棄権しているという実態や、インフォームドコンセントの解釈を「説明と同意」という「パターナリズム」を背景とした解釈を広めてきた経緯からも伺えます

2つの異なる医療倫理観
パターナリズム     
        * 家父長的温情主義
    * 親権主義
    * 保護主義


インディビジュアリズム
    * 個人主義
    * 個性主義















日本の医療における患者の立場は欧米とは異なっています。欧米においては医療者が患者の権利擁護に対して積極的な状態であるのと対照的に、日本では患者の方が自らの権利擁護のために奔走しています。各地に広がる権利擁護を推進する団体や組織が活動の主体ですが、このような活動が活発化した背景には、パターナリズムの弊害として発生してきた「お任せ医療、お仕着せ医療」の結果、医療過誤が多発し、患者の権利侵害が著しい状況が認められます。

 行政は医療経済の破綻を背景とした現状から、患者の自己管理と自立を促す健康創造社会への変革を目指し「健康日本21」という指針を打ち出しています。この中では患者の自立とあいまって患者の権利擁護のための患者責任の醸成を促す方向性が認められます。

 日本におけるインフォームドコンセントを主とした患者の権利擁護の環境整備は、まだまだ初歩的な段階といえますが、ITを背景とした情報発信の環境が整備されている現代においては加速的に患者の権利擁護の社会システムが構築されていくと予測されます。


患者中心の歯科医療シリーズ予告

****患者中心の歯科医療V****
☆患者の期待に添った医療


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歯科医療ネットワーク メールマガジン 2005.02.21号