特定非営利活動法人 明日の歯科医療を創る会POS
歯科医療ネットワーク メールマガジン



  
患者中心の歯科医療



【患者の権利と変換のキーワード】 
〜患者の権利と世界標準の医療の流れ〜

医療変革を目指すときに2つ目に取組むべきポイントは、世界標準の医療倫理基盤に準じて、医療システムを考えることです。元来、医療の根幹を成す、医療倫理観は『パターナリズム』を基本としてきました。これはヒポクラテスの誓いを基盤としており、専門性の高いプロフェッションと呼ばれる医療者は、常に患者の利益を考え、善意の気持ちを持って患者にとっての有益な結果にたどり着けるよう誘導していかなければならないという概念でした。
しかし、この概念では患者責任の情勢ができないほか、医療者の情報開示においても医療者にとって不利益な情報をあえて開示しないという自体を引き起こしており、このような状況は医療者に対する不振へと発展しています。    

医療変革において必要なことは、専門家である医療者が一方的に責任を負うのではなく、患者にも一定の責任を引き受けてもらい相互の協力により、より良い医療結果を手に入れる事が大切です。    

このような考え方は、医療は患者のものであり、医療に対する様々な権利を有するという患者中心の概念へと変革しており、それが世界の標準的な医療倫理となっています。具体的には患者の権利が一連の医療行為の展開において守られているかという事が問われます。

   

【歯列に欠損のある患者の事例】

患者は歯の欠損部分の機能回復を望んで歯科医療機関へ来院しました。担当した歯科医師はこの欠損補綴に義歯を作製する方法を選択し、その治療方法、特徴、メリット、デメリットについて丁寧に説明し、患者の同意を得て、患者の医師で受診しました。    
後日、この患者はインプラントという治療方法を知ることになります。『インプラント治療であれば、義歯にくらべてしっかりとかむことができ、違和感も少ない』という情報です。    
患者は義歯を作製した歯科医師に対して『なぜインプラント治療のことを伝えてくれなかったのですか』と。    
歯科医師は、この患者の場合インプラント治療に向かない条件を持っていること、自分自身はインプラントを信用していないこと、高額な治療費がかかることは患者の生活の負担になるなどを考慮して、義歯での治療が患者にとって最善な治療となるという考えから、
歯科医師自身が患者にとって適切な選択肢として選んだと伝えました。
患者は、歯科医師が患者自身のことを考え善意に基づいて”患者にとって最善の治療”を選択してくれたことを知り、その好意には感謝しましたが、結果として手に入れた機能回復が、自分自身の求めていたものとは異なり、そのことによる生活上の不都合を引き受けて生活を送らなければならないのでした。


医療に参加する権利・知る権利・学習する権利・安全な医療を受ける権利・最善の医療を受ける権利・平等な医療を受ける権利・医療における自己決定権これらが正しく守られるような医療展開であったかが問われるのです。


この一連の流れをどのように考えるでしょうか・・・・   
 

歯科医師は医師としての良心に従い、最善のことを行ったので、医療者としての満足は手に入れました。
しかし、結果として患者は自分が満足できる最善の結果を手に入れる事はできませんでした。    
既に、アメリカでは同様のケースでの司法判断が下されていますが、歯科医師側に説明義務違反の判決が下されています。    
医療における自己決定権とは、患者は様々な状況を患者が理解できるように医療者に説明してもらった上で、自分自身の意思により、自分が受ける医療を決定するということです。
   
先の事例の歯科医師は、
自分自身の主義主張、様々な条件に対する判断を一旦脇に置き、様々な可能性について話をした上で、患者自身が自己決定できるように支援しなければならないのです。    
このような患者自身が医療の内容を自己決定するプロセスを支援するようなシステムを持つことはきわめて大変です。時間の確保や理解しやすいツールなどの整備、また医療者自身のコミュニケーションの能力も求められます。    
その一方、このようなプロセスを適切に行えは患者自身が医療に参加するようになり、患者責任が醸成され、より信頼関係が深まることになります。
さらに、医療者が提供できるより良い医療技術を患者の側から求めてくるという結果にもつながります。    
医療システム変換においては、患者の権利を擁護した医療システムの構築が極めて重要であり、このシステムを構築していかなければならないでしょう。   
このようなシステム構築の具体的内容はNPO法人 明日の歯科医療を創る会POSのホームページに掲載されています。

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2005.07.19