特定非営利活動法人 明日の歯科医療を創る会POS 歯科医療ネットワーク メールマガジン |
患者中心の歯科医療 |
【歯科医師が抱く不安への具体的な対処法】 | |
供給者主権(医療者中心)から消費者中心(患者中心)へ | |
豊かな先進資本主義諸国の中で常識となる医療倫理U | |
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前回述べたように医療変革の方向性は、患者の権利を確実に擁護する方向へ進んでいると言えるでしょう。 具体的な臨床事例からこのイメージを描いてみましょう。 前歯に歯冠補綴が必要な患者が来院したとします。 患者は生活保護を受けており裕福な生活背景があるとは思えません。歯科医は歯冠補綴が必要だという情報を確実に患者に伝え、患者の了承を得て治療に取り掛かります。歯科医は患者の社会的背景に対した配慮をし、最終補綴物は保険診療適応の前装鋳造冠を製作しました。患者に経済的な負担のないようにという歯科医の善意に基づく判断がそこにはありました。 この補綴物を装着後、仕上がりを確認しながら患者は「先生、この歯は隣の自分の歯と比べて色が浮いて見えるのだけれど・・・」という言葉を歯科医に投げかけます。 これに対して、歯科医師は平易な言葉を選びながら「この歯は金属の冠の表面に、その色を隠す為の白い色を塗って、その上に樹脂の材料を貼り付けているから、どうしても光が通り抜けず、透明感が出ないのです。それをカバーするには自費治療でセラミックの冠にする必要があり、費用がかかってしまうのです。」と状況を説明します。 この説明に対して患者からは「もう少し費用がかかってもその方がよかったのですが・・・」という言葉が返ってきました。 歯科医師の対応は丁寧かつ良心的ですが、歯科医師自身の価値観を治療に準用しました。経済的な背景から患者の負担が少ない方が良いという歯科医師の判断です。 患者中心の歯科医療では、このような判断をすることが適切ではなく、患者自身がどのような医療サービスを受診するかについての判断(決定権)をしなければならないのです。 この事例では、患者の知る権利・学習する権利・自己決定権が尊重されていない事例を紹介しました。世界標準の医療倫理基盤においては、医療は患者のものとして患者の権利が擁護された医療展開が成される事が必要となります。 |
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