特定非営利活動法人 明日の歯科医療を創る会POS
歯科医療ネットワーク メールマガジン
患者中心の歯科医療
【歯科医師が抱く不安への具体的な対処法】 
歯科医療変革のキーワード
患者さんの期待に添った医療〜患者さんの真の期待を知る〜
【患者中心の医療と患者さんの期待】
患者中心の医療を構成する第2の要件は「患者さんの期待に添った医療」ということです。これは、患者さんの権利擁護と同じく、患者さんの基本的人権の尊重という考え方から発展してきたものです。人はそれぞれ異なった価値観を持っているため、医療サービスの結果についても異なった期待をもっているため、医療サービスの結果についても異なった期待を持っています。従来のパターナリズムという医療概念により医療サービスが提供された場合には、医療者の価値観が最良のものとして提供されるため、患者さん個々の価値観や期待が反映されず、患者さんの権利が侵害されることにもなりかねません。先ずは患者さんの期待を明確にし、その期待をまかなう支援者として医療者がどのような医療支援を行うのかということが決定されなければならないのです。これが「患者さんの期待に添った医療」ということです。
【患者さんの表面的(原始的欲求)】
患者さんの期待に添った医療を行うということは、患者さんにいわれるがままを受け入れ、あたかも患者さんの奴隷であるが如く、医療者が医療サービスを提供するということとは異なります。この点は、多くの医療者が誤解をしている点です。
元来、患者さんは医療知識が乏しく、自分に発生している問題の種類や程度、またその治療についての適切な知識を持ち合わせていません。このような状態で患者さんの希望を聞けば患者さんにとって都合の良い希望のみを提示することになってしまいます。その希望は集約すると「早く・安く・痛くなく・完全に・見た目も美しく治して欲しい」と言った内容になります。これらは、いわゆる患者さんの表面的(原始的)欲求なのです。では、歯科医療者がこのような希望をそのままに受け止め、この希望をかなえることは可能かというと、残念ながらそれは不可能です。
しかし、例えば「早く・安く・痛くなく・それなりに・見た目は我慢していただいて治療する」ことは可能でしょう。あるいは「必要な時間をつかい・妥当な費用で・痛みを最低限に抑えて・可能な限り完全に治し・なおかつそれが悪くならないように管理し・見た目も自然に治す」ということも出来るでしょう。
このどちらが正しいのかという問いに対して答えはありません。しかし、患者さんはその知識の少なさから表面的欲求を訴えることが当然であり、また、歯科医学や歯科医療を知っている医療専門家では、判断が異なるのも当然です。
ですから、
患者さんの希望を正しく聞き取り、その内容の整合性をとって、患者さんの真の期待に添った具体的な医療の内容になるように関わることが、医療者には求められるのです

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歯科医療ネットワーク  メールマガジン2006.7.12