特定非営利活動法人 明日の歯科医療を創る会POS 歯科医療ネットワーク メールマガジン |
患者中心の歯科医療 |
【歯科医師が抱く不安への具体的な対処法】 | ||
予防型総合歯科医療の定義と医療展開システム構築の要件 | ||
今回は患者中心の歯科医療のモデルとして構築された「予防型総合歯科医療」とはどのようなものであるのかについて説明します。 「予防型総合歯科医療」は、予防歯科・予防歯科医療の実践モデルの1つであり、患者さんの本質的な期待を包括している「生涯に渡り健康な口を維持していくこと」を目的とした医療システムです。このシステムでは、予防歯科医療の要件に加えて、患者中心の歯科医療に不可欠な2つの要件を含んでいます。 1つは、患者さんの期待に添った医療を実践できるシステムである事です。治療開始までの患者さんへのアプローチにおいて、明確に患者さんの期待を聴き取る為の手順とその具体的方法をシステムとして取り入れているのです。この手順とは、患者さんへのインタビューの中で実践されますが、その内容は今までの医療で主流であった、患者さんの身体的データを効率よく入手するという目的のみではありません。身体的データの入手は当然の事としながらも、患者さんの社会的背景や心理社会的な面の情報もあわせて入手していくのが特徴です。これらのデータは、患者さんが満足する医療を提供するに当たって、どのような医療サービスを提供するのが良いかを検討するために利用されます。また、このような患者さんの背景についても聴きとるという姿勢は、患者さんが受け入れられているということを実感させ、患者さんとのラポール形成にも大きく寄与します。 |
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もう1つには、患者さんの権利擁護のプロセスを確実に含んでいることです。医療は患者さんのものであり、最終的に患者さんが自分自身にもっともふさわしい医療内容を自己決定するところまで、医療者は支援しなくてはなりません。このようなプロセスは、医療への参加権・知る権利・学習する権利・平等な医療を受ける権利などが適切に保護されたうえで、患者さん自身によって自己決定権を行使(インフォームドコンセント)することで達成されます。 具体的に診療の場でどのように行われるかみてみましょう。医療者は患者さんが生涯にわたり自分の歯を使い続けるという観点から、口腔内の問題点を洗い出します。その結果は、患者さん固有の情報として文書化され、医療者から患者さんに開示されます。このプロセスで行われる、患者さんに解り易く表現する為になされる様々な配慮(例えばイラストや写真を活用する)が権利擁護の視点を踏まえているという事です。 |
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次に具体的な医療介入のあり方です。予防型総合歯科医療のもっとも重要な点は、生涯にわたり口の健康が維持されるために必要なプロセスを、もれなくプログラムとして展開している点です。このプログラムは3つのステップで構成されます。 第一のステップは、生涯にわたり口の健康を守り、新たな問題の発生を予防する事です。これが原因除去のプログラムです。このステップは歯科衛生士が主体となって展開されます。 第二のステップは、歯科医師が担当する総合歯科治療です。問題があるところを順番に治すパッチワーク方の医療展開ではなく、細菌性疾患・医源性疾患を総合的に判断し、それらをバランスよく治療していきます。その治療では、咬合ストレスを破壊的にならない程度までに十分に排除することと、口腔内で清掃が出来ないところをなくすように、管理し易い口腔内を構築する事が求められます。 第3のステップは歯科衛生士が主体となって関与するメインテナンスです。一旦獲得した健康状態を維持していくために必要な支援内容を、個々の患者さんに対してプランニングし、実行し、実行します。細菌性原因因子の除去だけではなく、患者さんの生活習慣や全身状況との兼ね合いにも配慮した健康支援がその目的となります。 これらの質の高い医療介入によって、長期に尾わたって安定し、患者さんの期待である、生涯に渡り自分の歯を使い続けるという結果を提供する事に繋がります。 最後に重要な要素は、必ず患者さんの個別性に配慮し、個々も患者さんにあった医療サービスプランを立案・提供している点です。薄利多売大量生産型を実践する多くの歯科医院での経営においては、医療介入の効率性を追求する為に一定のカテゴリーで患者さんを分類し、患者さんをこのカテゴリーに沿った治療手順(ガイドライン)にあてはめようとします。しかし、患者さんの歯科医療に対する期待やもちあわせる問題が同じである事はなく、一定のカテゴリーでは個別性に配慮したサービスの提供が出来ません。予防型総合歯科医療の展開においてはこの点への十分な配慮がなされることが要求されます。 予防型総合歯科医療は、良質の結果を追求して構築された医療視す天寿であり、従来の医療システムとは大きく異なります。しかし。歯科医療の価値を明確に訴求し、その結果を出すことによって、患者さんからの信頼を獲得し、歯科医療自体の本来の価値を高めていくシステムである事は間違いありません。 |
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